巨大福祉国家の破たん

 国家と言っても、某国の巨大自動車会社の話です。まあ、いろいろと破たんの原因はあると思います。小型車の生産に消極的だった。環境対策がおろそかだった。トップの異様な高報酬。生産が非効率だった…。
 なかでも私が注目するのは、レガシーコストでしょうかね。アメリカはもともと、無保険・無保障の国ですから、そこをGMのような巨大企業は、自前で健康保険や年金を用意し、労働者を集め、社会的信頼を得てきたといいます。アメリカ社会では、GMに勤めるのは憧れの的だったと。
 それは、本来国家や社会が持つべき費用を、いわば企業が肩代わりしてきたと言えるでしょう。(環境や事故といった費用は別にして…)
一方の日本企業はどうか…? 下請け・孫請けを締めつけ、また本社の本体工場でも最近では非正規労働者を多く雇い、それらの社会的費用の支払いを逃れています。
社員や退職者の医療費や年金を払い続けてきたGMにとっては、トヨタなどの新興グローバル企業は、社会的コストを払わない、国際的なブラック企業と映ったはずです。だから、日本車バッシングも起こりました。
 そんな企業同士が競争するわけですから、GMが敗れるものある意味、仕方がないと言えるのではないでしょうか。GMの破たんは、単純な国際競争に敗れたというより、自前で福祉を担わされ、自らの重みで自沈したという側面があります。そしてそれは、ひとつの福祉国家の破たんのように、私には思えるのです。
 今後、国際競争はますます厳しくなります。勝ち残るために日本企業は、(GMのようにならないために)自重をなるべく軽くするでしょう。人件費を削り、生産拠点を一層海外に移すでしょう。企業が軽くなった分の費用は、結局は日本社会が背負うこととなります。
 それを思えば、GMの破たんを笑うことはできないのです。