かつて、モノづくりが国際競争の激化で凋落するのは仕方がないとしても、その分を海外投資や金融取引で儲ければ、なんとかなるはずだという主張があった。その極め付けが、金融工学だったわけである。だが金融工学は失敗した。モノづくりよりカネづくりの方が、はるかにリスクは高いのだから当然である。
そして金融の危機が、ついにはモノづくりまでをも危機に追い込むこととなった。これでは本末転倒である。象徴的なのがかのGMである。凋落のさなかのGMが、手っ取り早く今まで通りの大型車を売って儲けようとしたのが、無茶苦茶な自動車ローンとの抱き合わせ販売であった。そして金融危機にワンテンポ遅れる形で、アメリカ最大のモノづくりもトドメをさされた格好となったのである。
一方、日本は金融工学に手を出さなかったから大丈夫だと当初は言われたが、結局は大きなダメージを受けてしまった。実は海のむこうの金融工学の恩恵をかなり受けていたということである。こうして、最初の地点=国際競争の激化によるモノづくりの凋落、に戻ってしまったというわけである。
やはり、モノづくりはもうダメなのである。新たな技術で、何か新製品を作り出しても、人件費の安い国にあっという間に追いつかれてしまい、価格競争に持ち込まれてしまうのだから…。したがって日本企業が、日本国内で積極的にモノを生産することは、もうない…。(非正規労働者を使い捨てにするなどして)いかに人件費を下げようとも、国内で製品を作って輸出する限り、どうやっても割に合わない。今後新興国などの需要が戻ってきたとしても、国内の雇用増にはつながらないであろう。中国向けの製品は、日本企業の中国工場で作るようになるからだ。
それでも大企業の「東京本社」は利益が出て、株価も上がるからいいだろうが、日本の地方の工場は軒並み移転・縮小・消滅の運命をたどるであろう。日本列島の大部分の景気が、よくなる見込みはない。
したがって、この不況には、出口なし、解決策なし…。
今まで(=高度成長期)がむしろ良すぎたのだと思って、ゼロ成長時代を引き受ける覚悟を決めようではないか。対応策なら、まだなくはないのだから。