てっとりばやく出世したい

 ある分野でそれなりに成功した人物が、別の分野に転身しようとする。その場合、すでに十分なステータスがあるわけだから、たとえば国会の一年生議員というのは、あまりかっこがよくない存在と映るようである。
 そこで、もっと権限があってエライ立場、たとえば自治体の首長のような存在は、魅力的に思えるのであろう。地方自治体は大統領制に近いから、てっとりばやくトップになれるからだ。
 しかし、首長として住民や議会や職員と交渉し、予算や条例を作り、改革を進めるのは結構ホネが折れる仕事である。そもそも民主制においてはドラスティクな改革などできない。民主政治とは迂遠で忍耐のいる仕事である。
 すると今度は、何でこんなにうまくいかないのだ、と癇癪を起こし始める。ただ怒ってばかりでは格好がつかないものだから、それは地方に権限がないからだ、ということにする。そして体裁よく、地方分権を唱え始めるのである。
 やがて首長よりもっと権限のある立場が欲しくなり、政権与党の中枢か閣僚以上のポストを逆提案するに至るというわけである。
 結局のところ、この手の人物の本音は、もっと偉くなりたいけど、面倒くさい仕事はイヤというところにある。その精神構造は、次々とオモチャをねだり、買い与えられた途端に飽きてしまう幼児と大差ない。まずは、与えられた任期と仕事を全うするというのが、本筋であろう。