老人性反抗期

 最近やたらと父の機嫌が悪い。食事のときでもムスッとし、話しかけてもまるで答えない。その姿はまるで思春期の若者のようである。
ちなみに父は齢八十過ぎ。いままで大病することなく元気に過ごしてきたが、ここにきて自らの体の衰えに愕然とし、それで不機嫌になっているのだろうと、10歳下の母は推測している。
 思えば人間というものは、偉大なものだとも思う。肉体も知力も必ず衰えるということを認識しながらも、それを拒否したり、まして癇癪を起したりはしない。みんな文句も言わず、静かに老いを受け入れているように思えるのだから。(なかには本気で不老不死を願ったとされる大物芸能人もいたらしいが)
 それでも時に、嘆いたり不機嫌になったりすることはあるのだろう。これも老いという強大な流れに対する一種の反抗期の類なものなのかもしれない。私自身、温かい目でほうっておこうと思っている。