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 最近の若者は…と言うと飲み屋のおっさんの愚痴のようになってしまいますが、若者論を一つ。
 私は仕事が塾講師ということもあり、若者というか子どもと接する機会が多いのですが、子ども相手といっても、そこはサービス業ですので子どももお客の一つだと考えるしかありません。
ましてサービス業の競争は年々激しくなっていますから、子どもに接することは、ますます難しくなったと感じます。甘やかすというわけではないのですが、次々に寄せられる親や子の要望に合わせざるを得ません。「先生を自由に選べる」とか「成績保証のある塾」といったキャッチコピーがチラシに載っています。親も少ない収入の中から授業料をやりくりしているようですから、あれこれ要求するのは当然のこととも思えますけど…。
もっともこの傾向は公立学校でも大学などでも例外ではないようです。たとえば、大学のオープンキャンパスの大盤振る舞いぶりと言ったら、一昔前なら考えられないような水準です。とにかく、消費者は王様のご時世ですよね。
 でも、そのように大切に育てられ、ある意味「楽に」大人になった子どもたちも、仕事をする立場となると、いわば攻守の立場が入れ替わることになります。そして労働者として厳しい立場に置かれるというわけです。就職して一気に挫折してしまう子も少なからずいます。アルバイトすらできない子も。
 こうなると、どちらがより幸福であるのか、判定は難しいですよね…。お客として、ある程度の不便を許容する社会がいいのか、消費者としての立場が最大限擁護される社会がいいのか…。
消費者と労働者という極端な分裂状態を、人生の一番最初の時期に経験せざるをえない現代の若者はある種の不幸に見舞われていると言えるのではないでしょうか。