今さら工場見学!?

 工場見学が人気だという。社会科見学風に内部を見るものやら、外から工業地帯のプラント群を眺めるナイトクルーズというものまであるらしい。そんなに工場が珍しいものかね…。
 思い起こせば、私の住んでいる都内S区は住宅エリアだけど、私が子どものころには、いくつか町工場があって、なにかしら物をつくっているという感じが少しはあった。それらの工場はみな廃業するか移転するかしてなくなったが…。
ものづくりの拠点はいまや中国である。それゆえ、国内に現存する工場は珍しく、観光地としての意義を持ち始めているのだろう。
巨大な工場の中でベルトコンベアに張り付く作業を鎌田慧が「絶望工場」と評し、松下竜一が火力発電所の埋め立て工事に「幾十度怒りをこめて仮想の銃口をむけた」(「狼煙をみよ」)のは、遠い過去の話となってしまったかのようである。
もっとも今ごろは、中国やアジアで「これ以上の巨大開発は断念すべきであり、これ以上の経済大国になってはいけないのだ」(同書)と叫んでいる者もいるだろうが…。