20年前のお値段です。

 経済指標などでは、前年同月と比べて売り上げが増えたとか減ったとかで騒ぐわけですが、1年前と比較する程度では、経済や社会全体の変化を把握することは難しいでしょう。
 というわけで、一気に20年前と比較してみたらどうでしょう。この20年間の変化がどの程度のもので、またその変化の幅をみれば、この20年間で社会はどのような方向に変わってきて来たかということがわかります。そしてこのままのペースでいけば、社会がどのように変わっていくのかがある程度わかります。
 もっとも手元には、『戦後値段史年表』(朝日文庫)しかないので、これをもとにいろいろと考えていきましょう。
 1989年の銀行員や小学校教員の初任給は15万程度なので、おおむね賃金は30%はアップした感じですね。大型の時刻表は800円→1050円。週刊朝日は250円→350円。まあ、賃金上昇率と大きな差はないですね。タクシーは初乗り520円→710円に、都内の地下鉄は140円→160円、JRは消費税以外の値上げなしです。羽田⇒新千歳の正規航空運賃は25500円が33500円にアップですが、現在の実勢運賃はもっと安くなっています。
食べ物では食パン140円、小麦粉は1キロ200円とありますが、現在はむしろ下がった感じです。ちなみにマクドナルドのハンバーガーは200円→100円。床屋は2900円とありますが、最近は伝統的な理髪店に行くこと自体が少なくなりました。国産自転車は43000円。今となっては高級自転車です。このあたりは値下がりが進行していますね。
都立高校の年間授業料は88000円が122000円に、国民年金保険料は月額8000円が14000円に大幅アップしています。
総じて言えば、食品や外食・サービス業では競争激化とグローバル化により値下がりが進行し、国民負担の割合は増加していると言えるのではないでしょうか。
百貨店やスーパーや出版業はとうとう20年前の売り上げに戻ってしまったと聞きます。右肩上がりから右肩下がり、そして20年前に逆戻り…。もっともこれは一部の業界に限った話ではないでしょう。20年前の給料で働く非正規労働者や、20年間昇給なしの正社員は現に多く出てきて、消費を押し下げています。
収入が低いから安いものしか買えないのか、安いものしか売れないから収入が上がらないのか…。両者が絡み合ってこんな状況になってしまったというわけでしょうか…。