地方を旅するとき、夕食を居酒屋やすし店でとることが結構ある。するとどこから来たのかと店主や常連客に尋ねられる。「東京です」と答えるしかないのだが、そうすると大抵ある種の勘違いが発生する。つまり私は国をリードするような成長産業に従事していて、収入がたくさんあって、勤務先は法人税を、個人としては所得税をたくさん払っていると。さらに言えば、それらを原資に地方交付税交付金が支払われ地方の生活を支えているのだと…。
実態は全く違います。私は単なる貧乏旅行者にすぎず、結構奮発して食事をしています。勤務先は地元の赤字企業で、法人税はもちろん所得税もたいして払えません…。それに今の仕事は別に東京でなくともできるし、たまたま生まれたところが東京で、勤務先も同じところで、ただ仕事をし生活をしているにすぎないのです。
首都圏の人口は数千万人、そのうちどれくらいが冒頭のような生活をしているのかわかりませんが、たいした数ではないでしょう。大半の人は、都会に夢を抱いてきたわけではないし、ひと旗挙げようと思っているわけではありません。
しかしそれでもなお東京に人が集まるのは、夢や希望というより、単に地方に仕事がないからという側面が多いのではないでしょうか。そこには地方の疲弊という厳しい現実があります。(北の飲み屋街の疲弊ぶりもひどいものがありましたが、それは都内でも程度の差こそあれ同様なことがいえます。)
まず日本全国の全ての地元に仕事がきちんとあって、普通に生活できるような社会にしなくてはならないのだと思います。