「速い・安い」を早く

 以前この欄で知人が「新幹線は速い」と驚いていた様子を紹介したが、その際も私は彼の誘いを断り在来線で2時間かけて帰宅した。それは私が平生から「新幹線は非常に高い」と思っていたからでもある。熱海―新横浜2駅の新幹線特急料金は1680円もする。ちなみに東京―新大阪は運賃+料金で13000円余。勤め人の出張なら会社が費用を出してくれるが旅行や所用で使うには高すぎると思う。
 空路も鉄路も完備したこの国で夜行高速バスがあれだけ繁盛するのは、何も利用者が出発地や目的地で時間をフルに活用したいわけではなく、単に交通費を浮かせたいからという理由が大きい。
内田百輭先生よろしく寝台の阿房列車なら風情もあるが、座席の夜行バスというのはなかなか辛い道中である。新幹線や飛行機に乗れない人々が大勢でバスを仕立てて深夜の高速道路を行き来する。それは何だか新しい貧困のスタイルのようでもあって少し物悲しい。
ところで先の与党代表選挙の論点に、バラバラに出している地方への補助金を一括交付金にせよというのがあった。今までの補助金は中央への陳情やら説明やらの手続きが膨大で無駄が多いとのことである。
その無駄の中には、お役人の地方から霞が関への出張費も含まれるであろう。公務員の移動に年間何億の費用がかかっているのか知らないが元は税金である。一括交付になれば霞が関に一々お伺いを立てることは少なくなるに違いない。
一連の改革が成功すれば鉄道会社や航空会社は、正規運賃で乗ってくれていた上客の何割かを失うことになるだろう。そうなれば、少しは一般客への配慮をみせてくれるかもしれない。