グレや

 世の中には猫嫌いも多いが猫好きもいる。うちのシロ、グレ、ミケは順に雄、雄、雌なのだが、そろそろ年頃だしどうしたものかと思案していたら、猫好きの方が去勢と避妊をした方がいいと助言してくれてきた。その方は、もっと子猫の頃から三匹の存在に気付いていたそうである。野良猫を保護してはそういう手術をさせたり、飼い主を捜したりしている。町内の猫を始終見て歩いているのだからたいしたものである。
 猫など噛みつくわけでもなくせいぜいフンをするぐらいなのだが、苦情が絶えないという。その方も飢えた野良に食べ物を与えているだけで、住人に怒鳴られたりするという。
 猫もすっかり居ついたので、これを機会に内田百輭の『ノラや』を読んでみようと思った。鉄道は好きだが今まで猫のことなどまるで関心がなかったので読んだことはなかった。つい億劫でネットで古本を取り寄せてみる。すると相手方は「予想より少々汚れていたので本体・送料ともタダにする」と申し出てきた。古本が多少汚れているのは当たり前のことであり、気にするようなことではない。むしろタダで本を読む方が何だか格好がつかない。これも苦情を気にしての過剰な処置であろう。
 なんだか皆苦情ばかり言ってつまらない世の中になったものだと思った。