迫りくる大惨事

 NHKスペシャル『862兆・借金はこうして膨らんだ』を一ヶ月ぐらい遅れて再放送で見た。(本放送は日本シリーズの方を見ていたので見られなかった) これは、歴代の大蔵省の事務次官が、過去の財政政策を振り返るというインタビュー中心の番組である。
 多くの大蔵幹部が、赤字国債の発行を禁じ手であるとの認識をしながらも、景気対策をせざるを得なかったと語っていた。また景気回復して経済成長すれば、借金は税収増によって回収できると期待していたとも語っていた。しかし、判で押したように税収は伸びなかった。
 すでに昭和50年前後から、景気後退→国債発行→公共事業、しかし税収は伸びず…という構図が出来上がっていたというのは、正直なところ驚きだった…。(過去を振り返る元官僚たちが、借金の増大に忸怩たる思いを感じていると反省しながらも、天下りしたであろう立派なオフィスでインタビューを受けている姿も同じく印象的だったが…)
 借金してでも景気を刺激するという手法はすでに30年前から失敗していた。そして現在でもその手法は同じである。やはりいつまでたっても景気も良くならないし、その先の経済成長となるとますますさっぱりである。今まで出来なかったことがこれから急に出来るとは思えない。
 また同時に番組では、増税(つまり消費税の導入)への国民の抵抗が、いかに大きかったかということも振り返っていた。
 増税は不可避だとしても、問題はそのやり方である。増税には国の行政を根本的に見直した上で、国民の理解を得ることが不可欠である。行政の無駄を切ることは自民党政権以来過去一貫して出来ていなかったが、政権交代した民主党政権でも、やはり出来ずじまいといったところである。ここ一番頑張るどころか、公務員制度改革特別会計の見直しや天下りの禁止等々、若干の事業仕分けののち、もうあきらめてしまった感がある。
 それに細川政権の国民福祉税構想の失敗と同じことを、現政権もやってしまった。いきなりの増税の提案⇒参院選の敗退というかたちで。これも同じことの繰り返しである。
 政権交代しても行政の費用を縮減できないとなると、増税への国民の理解を得ることはますます難しい。財政再建を行う可能性はますます少なくなってきている。
 となると、いよいよ厳しいかなぁ。何も厳しいのは民主党の支持率に限った話しではない。この国自体が…。財政破綻の危機が迫ってきたというより他ない。国債の国内消化はあと数年で出来なくなる。つまり国債の発行額が国民の預貯金の総額を上回る。そうなれば引き取り手のない国債の利率は一気に上昇する…。
 結局のところそのツケは、国民が増税(特に消費税)とサービスカットという形で背負うことになる。財政破綻すれば有無も言わせず増税は進むだろう。それは平時の増税より急激なものになる。これは国民生活にとって大惨事である。
それに当の公務員だって給料はぐっと下がるし、四人に一人ぐらいはクビになるかもしれない。〈民主党政権はたいしたことない〉とお役人連中が喜んでいられるのも、今のうちのことになるかもしれない…。