前夜の旅行

 少しだけ西日本に行ってきた。二両の気動車に乗って小さな町の小さな居酒屋に入った。地元のお客が酒をくれた。一日二本の路線バスの乗客は多くなかったが、信用金庫が撤退した山間の集落には、農協と郵便局とおばあちゃんがひとりでやっているうどん屋があった。おばあちゃんは、うどんには自作のネギを入れると張り切っていた。山には木を切る人たちがいた。海には魚をとる人がいた。
 相変わらず高速道路と国道のバイパス工事は進行していたが、日本の海や山に住む人たちは、みんな真面目に生活していると思った。
 この国をあと数年以内に、財政破綻と言う大波が襲うだろう。増税と歳出削減そして不況という三つの大波となって。大きな都会にも小さな村にもそれは襲いかかる。どちらかといえば、その大波は過疎地に生きている人たちをよりひどく直撃するだろう。
 政府による補助金交付金と企業の内部補助がなくなったら、学校もバスも病院もなくなるだろう。橋や道路も直せなくなるかもしれない。
どんなことがあっても、みなさんお元気で…と思わずにはいられない。むろん、私とて例外ではない。その大波は大きな都会の小さな勤務先をも襲うだろうから。そうなったら、むしろ海や山のある方がいいかもしれないな、と思う次第でもある。



と書いたのが、数日前。財政破綻しても直接人が死ぬことはないが、物理的な波はそうではない。今回まさかこれほどの波が襲うとは…。救助と復興を祈るのみである。