7月16日・土曜

余りに暑いので伯母の所に避難しようと思う。伯母は家を二軒も持っているから涼しいの方の家に行くことにする。新宿を午後の特急で出ることにしたが、生憎私鉄沿線に住んでいると身近にJRの窓口がなく、如何にも指定券は取り辛いから自由席で行くことにした。
しかし、旅行者の心理にはどこか被害妄想的な所があるとは故宮脇俊三氏の格言である。つまり、皆同じ所に行くのではないかと云う妄想にとらわれやすい。やはり自由席となると、どういう訳か徐徐に不安になってくる。例えば何かとんでもない団体が突如避暑を決め込み大勢で現れ、3両しかない自由席をあっという間に占領してしまうのではないか、などと心配になるのである。従って暑いプラットホームに這う這うの体で前前から並ぶ事となる。
しかもその特急列車は上り列車の折り返しの運用で、折り返し時間が20分しかないのに、10分も遅れてやって来た。1分で乗客を下車させ6分で車内を片付け座席を進行方向に直し、3分で新手のお客を詰め込み大慌てで出発する。幸いにしてとんでもない団体は来なかったが、やはり指定自由とも満席とのことである。
以後順調に走って来たが、中央線は諏訪の辺りは単線で、上りの列車の遅れを受け止めている内に下り列車も遅れ始める。途中で支線に乗り換えたが、本線の遅延列車の接続を取っているうちに、やはり遅れる。さらに支線の対向列車も遅れており遅れは更に拡大する。而も支線列車の車掌氏は、小駅であっても無賃降車はさせないぞと云う覚悟を決めているらしく、乗車券の完全回収を目指し走り回るばかりで、停車時間の縮減はしないようである。支線では運賃回収が定時運転より大事なのであろう。
結局遅れは解消したり又広がったりで伊那には10分遅れで到着。それにしても一体全体今日一日何処の誰が最初の遅れを作ったのか追及したくなる。別に10分遅れたところで我が人生に何の悔いも無いが、やはり列車というものは時刻表通りに走るのが通例だから、例え5分の遅れであっても気持ちが悪いのである。遅れずに列車が走れないのなら、遅れたダイヤを正規のダイヤにすべきである。
市内では年の離れた従兄夫妻が待っており、行きつけの飲食店を案内される。二軒目は老舗のバアに案内され、随分高齢のバアテンダーにお酒を作ってもらう。古い店らしく何だか人生の老整備士に心と体を調整された感じであったが、バンブー何とかという高級ウヰスキーを飲んだせいか、酔いも醒めるような御勘定であった。その後伯母の家に行き、醒めた酔いを一旦戻してから寝る。