目覚めると6時であった。店を出ると夜が綺麗に明けていた。丁度夜汽車を降りた様な印象である。しかも寝台列車ではなく座席の急行か何かに飛び乗って来た草臥れ具合であった。長らくのご乗車お疲れ様でしたとの店員の案内は無かったが、以後通勤電車を乗り継ぎ8時前に漸く家に辿り着いた。再び就寝す。
今日は今日で、先日入院した井満さんの見舞いに行く日でもあった。夕方の面会時間に合わせて出動す。金曜会のメンバーと合流し病人を見舞う。幸い手足も口もきちんと動くようなので一同安心す。併し頭の中はまだぼんやりとしている様で目の焦点が今一つの合い具合であった。其れにしても古い病院の一般病棟は天井も低く照明も暗い。増して8人の相部屋ともなれば、丸で大昔の安宿のようである。あれでは三日も入っていれば、心身共に壮健人でも早速病人になって仕舞うであろう。丸で病院が病人を拵えているかのようである。もう少し何とかならぬものかと思った。壁紙をいっそ桃色か何かにするだけで大部雰囲気が良くなる筈である。
一同同じ様な事を考えていたらしく病院を出ても暫く無言で歩いた。その後大衆酒場を見つけ、健康に感謝しながら明るい内に飲み始めた。少し飲むと忽ち何時ものペースを取り戻し、梯子を上ったり降りたりしている内に帰宅は11時となる。