再び冬日となる。一日暗く曇る。折角こうして3月になったので貧乏学院から休暇を頂き何処かに出掛ける事にしたいと思う。依然としてお金は無いことに代わりは無いが、幸い旅費の多くを信用貸しに立て替えさすので当面の心配は無い。しかし何ヶ月後には必ず支払わなければならないので、歴代の財務官僚の様な無責任な事は出来ない。一日蟄居し、地図や時刻表を何遍も引っ繰り返して、お金を成るべく無駄にしない様な旅行の計画を立てる。だが、そもそも旅行の本質とは、出稼ぎや出張とは異なり、お金を無駄にすることである。本来無駄にするお金を、せめてその内の幾等かを無駄にしないようにと一生懸命思案するのは、馬鹿馬鹿しい努力である。ならば、旅行に行くのを最初から取り止めにすればよい。然し年に一遍かそこらは何処か出掛ける事にしているので、今年も貧乏な旅行という半端な道楽をすることにした。
其れに幾らお金が無いとはいえ、旅行に使うお金は少しはあるのだから、私の貧乏も貧乏の王道を外れているとの御叱りを受けても仕方あるまい。中途半端な貧乏と云うものは、何をするのも中途半端になり一番始末に負えない事になると思った。