6/30・土
一日薄曇り。気温は高くない。少し変わったことをしなくてはならないと思った。其処で予ねてから誘われていた、運動倶楽部に出掛けた。運動倶楽部とはおかしな所である。大体世の中というものは、運動をしたくない為にお金を払う決まりになっている。電車もバスもタクシーも、歩いたり走ったりするのが面倒だから、運転手や車掌にお金を支払って載せてもらっている。蓋し運動倶楽部では、態態お金を払って運動するというから、世の価値観から転倒している処だと思った。体育の授業の様なものにも出て見た。実に二十年振りである。いい大人が、鏡に向かって踊りの様な格闘技の様な事をやっている。恥ずかしくて仕方がない。素面でやるとは正気の沙汰とは思えなかった。其れでも少しは運動した。その後少し飲んで帰った。
夜道がやけに暗いと思ったらコンビニエンスストアの一つが閉店していた。毎年燕が巣を掛けていた店である。今年は巣を掛けなかった。閉店するから巣を掛けさせなかったのか、燕が巣を掛けなくなったから閉店したのか、恐らく前者であろう。
6/29・金
午前中は曇り。午後から晴れて其れなりに暑くなる。エヤコンの改装終わる。新装相成った拙室のエヤコンを、興味半分に見に行った家人の足元が余りにふら付いた。その光景が気になって仕方がなくなる。一階から二階に上がるだけで、階段の壁を両手でつたいながら、半歩半歩踏みしめて辛うじて上がる。丸で這う這うの態であった。
今回新造投入したエヤーコンディショナーは全部で六台ある。その内の五台は家作に取り付けた。実を云うと相当数の家作がある。それらの管理は元は伯母が、そしてここ十年は耄碌した伯母に代わって父が務めて来た。だが先月の入院来、父の管理能力も愈愈尽き果てた感じである。
此れからは、家人に代わって吾人が、家賃の管理や帳簿の記入や税務申告をやらねばならないだろう。愈愈吾人も一人前から一軒前になったと、本来は喜ぶべきであろう事態だが、何だか丸で気持ちが昂進して来ない。家作の管理とは何だか全く気が重い作業である。大体自らの意志や才覚で切り開いた物ではない。家作が建っている土地等、昭和の初めに先先代が、畑だったようなところ偶偶買ったまでの話しである。
其れに吾人は貧乏学院で、しがなく教えるしか丸で能がない。いまだに月給は十数万に満たないし、其れすら途切れ途切れである。亦吾人には因って立つべき家人などもいない。あるのは老家人の面倒と事務作業そして可也近い将来に訪れる相続であると思った。
再びやって来た廃品屋さんの荷台に色色と詰め込んだ後、夕方近くに出社。上記の様な事を考えていると、すっかり気分が落ち込んで仕方が無い。悪態をつく中学生も、あちこちから寄せられた授業に関する苦情も、相変わらず今月の給料が遅れてもへらへらして居そうな無責任社長の顔も、金曜会の酔漢の繰り返しの款語も、給料や賞与が出た折にて繁盛していた飲食街で擦れ違う女店員の嬌声等も、丸でカラオケの機械にて歌を唄う際の背景映像の様な、丸で現実感のない物として通り過ぎて行った。帰宅後、せめて何か質感のある物を握ろうとしたが、三匹の猫は尽く掴まらなかった。
6/28・木
便器を新しい物に代えたら壁紙のみすぼらしさが際立ってきたので、職人さんを呼んで張り替えて貰う。弐萬五千円也。すると壁紙が異様に新しい為か、便所全体が明かる過ぎて困る。丸で何処かの尋問室に連れて行かれたようである。止む無く、蛍光灯を電球色のものに代えて対応す。一つを取り返ると全体が可笑しくなって困る。直しても直しても、しっくりこない。
一日曇り。地震多し。日中は25度程度。午後出社。中学生の試験が大方片付いたと思ったら、高校生が押し寄せて来る。更に本日は歯科助手か何かの学校に通う卒業生まで、授業が少しも分からないと云って来た。元元全く勉強が苦手な子であった。大学でも何でも、最近は誰でも入れるが、その後が続かない。無責任に上級学校を拵え、其れでいて高校課程で甘やかし過ぎた結果であろう。退社後は、鶴木さんと飲んで帰る。
6/27・水
一日晴れ。少し湿度は上がって来たがまだ涼しい。前日にかなりの不用品を搬出したが、良く観ると古い家と物置小屋には要らない物がまだまだ犇めいている。午前中は何もかも捨ててやるつもりで整理す。壊れた掃除機だけで3台もある。この際、皆捨てて仕舞おうと思う。午後出社。退社後は少し飲んで帰る。久久に若い人も来たから、財布は大いに苦しんだが、財布の持ち主は上機嫌で帰ったようだ。
6/26・火
一日晴れ。ただ湿度低し。火曜不出社。愈愈消費増税が衆議院で可決される。元代表を含め与党の何人かの国会議員が反対したらしいが、丁度電器屋さんが連れて来た廃品屋さんの車に、一切合切の要らない物を積み込んでいたので、採決そのものは見逃した。序でに要らない国会議員も持って行って欲しかったが、1000兆の借金はそういう訳にはいかない。税と社会保障の一体改革と言うが、増やした税金は、社会保障費の自然増と借金返済に充てられるから、取られた方としては、お金が巻き上げられた瞬間に海の真ん中に捨てられるのと同様の感覚であろう。滔滔厳しい時代になった物である。
夕方の首相会見は見た。宿願が叶い妙に興奮したようだった。丸で戦争でも始めた様な顔をしていた。政治家の紅潮した顔と云うのは呉呉も宜しくないと思った。戦火で酷い目に遭うのも、増税で貧乏になるのも常に市井の人人である。
6/25・月
一日曇り。やませの様な風が入り日中でも20度程度。午後出社。どういう訳だか同じ様な性格の女の子だけが集まった小学生のクラスがあり、余りに喧しいので暫く黙って放って置いた。すると前からいる子が、後から入った子に此処の漢字はこういう風に書くように云云と指導をし始めた。教師があれこれ言うよりも、いっそ自然状態にして置いた方が良いかもしれないと思った。第一、あれやこれやと教えないので楽で良い。
退社後は珍しく鶴木さんから連絡があり一緒に立って飲む。月曜の晩から変だと思ったら、一般的には今日は月給日に当たると云う事で納得す。
6/24・日
一日曇り。割と涼しい。拙宅の十六年物の電話機を交換す。今年二回目の量販店に行き、自転車でぶら下げて帰った。日曜だと云うのに店内は吃驚する程空いていて、お客より店員の方が多い感じであった。広い店を開け、毎週毎週紙とインクを使って販売促進に努めても、最近は何でも家から買える上に、品物さえ決めて仕舞えば、値段の照会まで自動で出来るという。量販店の類も街の電器屋と同じ運命を遂げるかもしれないと思った。
買って来た品物を早速取り付けて見ると、電話機としては確かに良くなっているので感心す。動かない電話を使うのは専ら高齢者だから、相応に出来ていて使い勝手も良さそうである。其れでも家人に使い方を説明するのが一苦労であろう。
6/23・土
日中少し晴れたが全般的に涼しい。電器屋さんが来る前に少し草を刈ってきれいにしようと思った。
6/22・金
朝方は激しい雨。御午には止む。襖の搬入完了。午後出社。少しチラシを持って歩くが、矢張り他人の室外機が気になる。学習塾のチラシより新型エヤコンのチラシを投函したい気分である。古い室外機が轟轟唸っているのを見ると、いっそ吹矢か何かで壊して仕舞おうと思う。
子どもの面倒を見て草臥れた上に、酔漢の面倒を見る気にもなれず、金曜会には出なかった。一人で馴染みの無い街に行き、馴染みのない店に入った。此処の所、いつも同じ店に安住していただけに、今宵は何だか一人で外国に来たような緊張感である。眼光鋭く品書きを睨み、怒り肩にして飲む。
丁度向いの席では、若い工員が、知り合いの親方らしき中年男性に説教されている。親方曰く、真面目に働いて早く借金を返すように。賭け事の類の止め、しっかり稼いで、前家賃を払えるぐらいになれと。若者を叱るとは見事な親方である。是非今度、その立派な親方に当方の無責任社長も叱って欲しいと思った。蓋し、説教の声は益益大きくなり、店全体が怒られている様な雰囲気になる。実に迷惑な親方である。
視線の持って往き場が無いので、テレビジョンに目を移すと公共放送が映っていた。どういう訳だが、未だに埼玉の廃校に身を寄せている福島原発からの避難者がいるとのこと。その面白くない生活模様が映されていた。画面の中も外もどちらも厳しかったが、偶にはこういう逆境に身を置かねばならないと思った。
一人だとお酒の廻りも早い。平生の猫背に戻ったのでそろそろ帰ろうと思った。勘定をしたら、女店員は当方が出した伍千円札を壱萬円札と勘違いしたらしく、釣り銭が異様に多い。お金を減らす為に態態お酒を飲んでいるので、お酒を飲んでお金が増えて仕舞っては酒飲みの理屈に合わぬ。正直に指摘して五千円を返して帰った。
6/21・木
一日曇り。涼しい程では無いが、暑くも無くなる。此の度、拙室の夏の夜を四半世紀も守って来た冷房専用機も引退させることにした。昨夏は数回しか使わなかったが、もう古い物は皆捨て去ることにしようと思う。馴染みの電器屋さんに来てもらって、見積もりを取る。数万円の普及型エヤコンでも十分節電になるとのことで安心す。然し電器屋さんが言うには、安価な普及型が節電型になったのは割と最近で、ほんの7、8年前迄国内企業の製品でも、全く節電にはなっていないとのこと。つい此の間までそんな粗悪品を乱造して電力需要を伸ばしていたと云うから、頻りに憤慨す。エヤコンのことなど何も知らなかっただけに、実に良い勉強になった。
以後エヤコンの事が気になって気になって仕方が無くなる。外を歩いていても、他人の室外機が気になる。無駄エヤコンには一刻も早く引導を渡した方が良い。本来ならば、此処で補助金制度を作り、節約エヤコンを派手に配るべきだが、既に国庫がすっからかんなので、其れは出来ないだろう。ならばエヤコン警察を作って取り締まれば良いが、其れでも強制力が足りないかもしれない。愈愈無二念打払令を出すとともに、エヤコン警察予備隊を拵えて、駄目エヤコンを其の実力を以て壊して回ればよいと思う。そして創設の暁には真っ先にその銃口を貧乏学院の19年物のエヤコンと無責任社長に向けて欲しいと思った。退社後は適当に飲んで帰る。暑さと台風に気を取られている内に、愈愈消費増税法案の採決と与党の分裂間近となる。
6/20・水
迷惑台風は暑い空気を置き去りにして行ったから、日中で30度もある。東京は初の真夏日となった。午後出社。職場の電気使用量が昨年より2割も上がっていて、今月は360キロワットもある。何が去年の今頃と変わったのか、早速犯人を探す。抜いた蛍光灯はそのままにしてある。冷房も付けていない。日曜授業の実施分の増加は仕方あるまい。すると下手人は、水の機械と云う事になる。
お金も無いのに無責任社長が見栄を張って、先月から飲料水の給仕機を玄関の所に置いた。昔の亜米利加映画で観た様な、例のプラスチックの大きなボトルが逆さかまに刺さった機械である。此れが私の見た処、一日当り数キロワットは無駄使いをしている。
大体、水を買うと云う行為が許せない。散散自分たちで身の回りを汚くしておいて、自分だけお金を払って旨い水を飲もうと云う魂胆が怪しからぬ。本来川から管を伝って来る筈の水を、遥か遠くから態態トラックに積み込んで運んで来る。其れだけで十分無駄な上に、更に直ぐ近くに冷蔵庫や魔法瓶があるのにもかかわらず専用の装置に態態入れて冷やしたり温めたりする。一体どれだけ無駄な事をしているか、考えただけでも腸が煮えくり返って来る。
其の上、給仕機のコックを捻って水を出した折、ボトルのなかに大きな泡が上がって行くのを、丸で水族館に居る様だねなどと言い、したり顔で眺めたりする。そんな顔を思い浮かべただけで、吾人は卒倒するほど腹が立って腹が立って仕様が無い。こういう酷い連中は、体を小さくした上で、汚い和式便所から流して仕舞えばよい。普段どれだけ自分たちが理不尽なことをしているか、自分たちが汚した下水のなかで思い知らせるべきである。
早速吾人は怒り狂って機械のプラグを引っこ抜いた。そして、このプラグを万が一にも差し込めば三日以内に直ちに死ぬことになっておりますと呪いの文言を紙に書き付けておいた。退社後は少し立って飲む。夜は十分涼しい。
6/19・火
まさか本当に来るとは思わなかったが、6月だと云うのに台風が来た。季節外れと云うより、季節の先取りという事になるだろうが、其れにしても規則違反は甚だしい。まるで秋物を六月から売り出す様なものである。夕方台風は和歌山に上陸した。従って関東でも日が暮れたあたりから本当に暴雨となる。夜半にかけて風も相当吹く。
家中の襖の全部と扉の半分が無くなってしまった。別に野分に連れ去られた訳ではない。畳を替えた結果、襖のみすぼらしさが際立ったから、全ての交換をお願いした為である。嵐の前に皆持って行った。何だか見通しが良くなりすぎて困る。火曜不出社。
6/18・月
今日も相当に蒸し暑い。昼は初素麺。午後出社。退社後は無責任社長の顔を立て、連れ立ったように古くからの立ち飲み屋に行った。まだ労使がそんなに対立していなかった頃は、良く行った店であるが、無責任社長との関係が微妙になるに連れ、段段足が遠退いて仕舞った。すっかり遠退いた分、私も常連の立場を追われ、今では外様大名の気分である。多少恐縮した様な顔をして飲んだが、常連のお客はすっかり無責任社長の取り巻きの中高年男性になって仕舞っているから面白い事は何もない。早早に退散す。
6/17・日
午前は雨。午後から薄雲り、但し南の風となり相当暑くなる。
6/16・土
昨日の逮捕劇の話しであるが、賞金を懸けられ、ああも映像を公開されて仕舞っては、最早逃げようはない。防犯映像は撮るだけでなく、それらの解析も自動で行えると云うから、犯罪捜査も機械化の極みに達したと言えそうである。前世紀半ば以降の大量生産品の流通が遺留品を良く観察すると云う推理小説の現実感覚を失わせたように、大量の防犯映像の撮り溜めは、魅力的な刑事警察官が主人公の警察小説の類を全滅させるかもしれない。
一日小雨が降る。屋外作業もなし。終日日誌を整理す。
6/15・金
永年の特別手配犯が捕まったそうで昼頃から騒騒しかった。逮捕の元は市民からの通報だそうである。日日無作為に巡査に追いかけられる身としては、逃亡生活の辛さは少し分かる気がする。通報は市民の義務だそうだが、通報の重要さを説くならば、その反対の行為の大切さも説くべきであると思った。詰まり、無実の人間を別荘かどこかに匿う事や、理不尽な官憲に追われている人をそっと裏口から逃がす事の大切さも同様に語られなければ、世の中の釣り合いが益益取れなくなると思った。
午後出社。金曜会あり。帰宅後は割と簡単に外猫が捕まった。シロをよく摘まみながら、どうして猫殿は日日そんなに呑気に暮らしているのか問い質した。併しシロはまともには応えなかった。税金も払わず、又年金保険料の納付記録も健康保険の加入履歴も無いのに。全く羨ましい楽天ぶりであると思った。
6/14・木
本日も北の気候となっているので、陽が陰る朝晩は涼しい。色色と家内の用事を片付けて午後出社。与党は野党案をほぼ丸のみし、愈愈消費増税採決近しとなる。大体、国会本体が捩れているのだから、こうするより手がなし。何も決定できないより増しである。
亦政府は漸く白熱電球の製造販売の自粛を言い出す。遅きに失したと思う。この際、古い家電も原子炉も全て片付けて仕舞えばよい。退社後月波君現る。すっかり軽い財布を一層すっからかんにして帰る。
6/13・水
今日も梅雨寒。一日曇り。草刈りののち午後出社。少し新生徒が入ってくる。また定期試験前なので職務に精励す。鶴木さんと熱海の反省会をしている内に、帰宅は深夜となる。
6/12・火
梅雨寒。雨の降らない午前中は草木を切り、午後から溜まった日誌帳と出納帳を付けた。私は二十年来日誌を付けているが、小遣い帳の類は付けたことはない。只、旅行中の出費は付ける事にしている。そうすることで、此処に行った、ああいう店でこういう物を食べて、旨かったの不味かったのと、彼是思い出すのが旅から帰った楽しみでもある。火曜不出社。
6/11・月
御午過ぎまでずっと寝て午後出社。廉価な旅館に泊まり、呉呉も節約した筈だが、概ね二週分の一般予算を一泊二日で失った。此処から暫くは緊縮財政であるから直接帰った。格安旅館でもまだ高いと思うぐらい給金が少ないのだから、熱海の街も益益小さくなってしまうであろうと思った。
今日で15ヶ月。一般的には何の報道も無かった。もう既に11という日付が、忘れられていると思った。
6/10・日
同行者に誘われて珍しく朝食を摂った。普段の私は朝食は先ず食べないが、実を云うと、食べようと思えば食べられないことも無い。普段食べない人まで態態食べに来させるから、バイキングと云うのは人を卑しくすると思った。そういうお客が一気に押し掛けた食堂は収容人数限界までお客が入っているようで、御飯を食べたくても器がない。少ない従業員が血相を変えて駆けずりまわり、お客が使った御茶碗を掻き集め、自動洗浄機に放り込んでいた。
熱海の全盛期のことなど丸で知らないが、戦災か災害に遭った様に旅館も商店も無くなっており、街のあちこちが歯抜けになっているのが痛痛しい。前日は起雲閣などにも行って見たが、ああいう贅沢が出来る文士や御金持は、もう熱海には来ないであろう。何だか御金持が来なくなった熱海が、貧乏人に仕返しされているようだが、御金持の原資は我我貧乏人の稼ぎであるから、貧乏人を精精大切にして欲しい物である。
朝から晴れたので皆で魚釣りをした。この時期は雨さえ降らなければ、暑さもそこそこで四時から七時まで明るい。欧州などでは結婚式を挙げ、旅行すると云うのも頷ける。矢張り六月にも休みを作るべきであると思う。
海に落っこちるのが嫌だから、私は釣りも海水浴もやらない。恐る恐る覗くと岸壁の下では鯵の様な魚がいる事はいる。然し大の大人が数名かがりで寄って集っても釣果は皆無に等しかった。尤も大方そんなものだろうと云う算段を付けておいたから、お酒を飲みながら空と海と山を眺めているだけで良い。そもそも陸からそんなに釣りあげて仕舞っては、板子の上で苦労している漁民に申し訳ないだろうと思う。
数時間経って漸く釣りを切り上げ、駅前の店で専門家が捕まえたお魚を食べた。海の恨みを店で晴らそうと一同鯵ばかり注文す。二等料金まで御鮨にして食べて仕舞ったので、普通車で帰ることにした。横浜で降りて東京急行に乗り換え、顔をぐったりさせて家に着いた。留守中猫は少しは人恋しかったようで、余り本気で逃げなかった。簡単に掴まったからよく撫ぜておいた。
6/9・土
朝から雨。関東も入梅の模様。御午過ぎの普通列車で行くことにした。折角の旅行で混んでいるのは嫌だから、二等料金を奮発す。熱海まで750円也。品川に集合してから乗り込む。東海道線の二等車は全て二階建てになっているが、二階席よりは個室を狙う。尤も個室と言っても正式なものではなく、車端部は平屋になっていて、縦二列の合計八席しかない所がある。此処に陣取れば他のお客は恐れをなして近付いてくることも無いので、事実上の貸し切り部屋となるので都合がいい。早速麦酒やおつまみ類を出しての宴会となるも、品川と熱海では乗車時間が余りに短く、宴会と云うより平素の立ち飲み屋に動く景色と椅子が付いた程度の飲み具合であった。持参のお酒も、車内販売員のお酒も飲み尽くす覚悟であったが、それにはあと数時間必要である。いっそ此のまま名古屋辺りまで走らせて欲しい物である。強烈な晴れ女である柳さんの奥さんの御利益かは知らないが、熱海に着いたら雨は止んだ。以後少し散策す。
熱海駅前の近代的なホテルに投宿した。何度も通った事がある駅前通りのホテルが看板を代えたらしい。何でも、不景気で経営が立ち行かなくなった旅館を買い漁っている企業集団があるようで、廉価版のホテルに再生させた所とのこと。お酒が付いても安い。その分、食事は弁当のおかずの様な物しか出て来ないが、酒の肴としては十分である。ホテル最上階の食堂の窓際に陣取りお酒を飲んだが、食堂も回転率を上げる為に一旦締め切るとのこと。結局一時間半ほどで叩き出されて仕舞った。
金曜会と云うのは、そもそもは飲み仲間の会であり、常在酒場が身上であるが、今回は少し様相が違った。と云うのも宿に麻雀部屋があり四六時中無料で使用出来る。麻雀とはある年齢以上の大人なら誰でも一度は馴染んだことのある娯楽の様で、寝飲を忘れる勢いで、深夜まで付き合わされた。私も安全牌や連荘などの麻雀から派生した用語は稀に使用するが、役と云う物が分からないから困った。予め少し勉強しておいたが、牌の配列なぞ、いくら教本を見ても最早ちっとも頭に入らない。人生の後半にこういう事態が訪れると分かっていたなら、若い頃にもっと勉強しておけば良かったと後悔した。
6/8・金
午後出社。実は金曜会の有志を募って、明日から熱海に行くことになっている。よって、今晩は割と早目に御開きする予定であったが、結局いつもの通りの事となった。
夕方首相会見し、福井の原発を動かすように指示したらしい。蓋し遅く帰った為詳細は聞かず仕舞い。原子力発電には、堂堂と危険宣言を出すべきであろう。そして危険物を呉呉も恐れながら使うべきである。其の上で、今ある原子炉をあと何年使って本当に御仕舞にするのか、きちんとした計画を立てればよい。尤も現首相は消費税の事で既に頭が一杯の様で、ことを原子力に限っては前首相を再登板させて欲しい。前首相が例の如く得意の癇癪を以て、全ての原子炉を直ちに叩き壊して仕舞えば尚よい。大体技術革新とは古い物を徹底的に廃棄しなければ始まらない物である。夜から雨。
6/7・木
5月の電気代前年比7%減。節電も2年目なので複利計算になるから、一昨年比べると随分と減っているのだろうと思う。尤も削減分は家人が入院していた為かとも思う。
午後出社。気候も宜しく、退社後は立ち飲み屋を連戦す。二軒目で出合った初老の男性と、時局に関して割とまともな討論をした。併し後から聞けば、実は有名な酒乱の御方で、方方の店を出入り禁止なっているとのこと。幸い今晩は大して酔っていなかったのだろう。私も、そういう一廉の人物に成らぬよう注意せねばならないと思った。
6/6・水
午前中は小雨。夕方には少し晴れた。本州南岸を通過中の台風が北風を引き込んだので案外涼しかった。午後出社。退社後は取り着く島を見つけて少し飲んで帰った。
欧州の債務危機は益益深刻化しているとのことで、どうにかここら辺で収まりますようにと、私も祈る。折角祈るからには対象物が必要であるから、家人が永年信奉している巣鴨地蔵相手に祈る事にした。戸棚に飾ってある紙で出来た本尊の前で態態手を合わせた。災害や戦争に限らず、不景気でも人が大勢死ぬ。況して戦争の原因のかなりの部分は経済不況であるから、此処は猶更祈らなくてはならないと思った。
6/5・火
焦げ茶色の大地が一斉に芽吹いた感じになるから、畳も新しい方がいい。屋根瓦、雨樋、大小の窓硝子、風呂一式、便器、そして畳と足駆け三年の交換計画も昨日を以て一応終了した。別に大きな建物や矢鱈高い塔を建てなくとも、古い物を定期的に取り替えるだけで、お金は廻るのかもしれないと思う。古い畳や便器や壁紙や襖をいっその事全て禁止にすれば良い。補助金を付けると云う方策を行う余裕は無いから、鞭の力を用いるのが得策である。政府が法の力を濫用して、遊んでいる警察官を総動員して、畳警察や便器警察や壁紙警察を作る。そうして古い家宅を徹底的に捜索して、情け容赦なく交換の命令書を発券すれば、少なくとも地域の職人が飯の食い上げになることは無くなるであろうと思った。火曜不出社。一日曇り。一人で脚立に上り。梅の実を取った。
6/4・月
家人の強い意向により畳表の交換に着手す。拙宅の記録によると実に15年振りとのことで、代代馴染みの畳屋さんには随分不義理をしたものである。畳屋は学習塾以上に構造不況の業種になるであろう。先ず畳の部屋が少なくなって仕舞ったことが挙げられるが、其れに加え只でさえ少ない畳の上には家財やら不要不急のがらくたの類が堆積して来るから、古い家に成れば成るほど畳替えは困難な一大行事である。
其の畳屋さんが朝の8時に来ると云うので、6時半から家人を根こそぎ動員して、大小雑多な物品の移動に取り掛かる。午後出社。退社後は立ち飲み屋を連戦す。帰宅後は新しい畳の上への物品の再移動に追われる。
内閣改造あり。与党元代表は増税には徹底して反対するとのことだから、首相は野党に秋風を送ることになる。もうじき与党は分裂であろう。また総選挙かもしれない。
6/3・日
午前は曇り。午後は晴れた。梅の収穫と茶毒蛾の退治と草刈りに追われる。何分、家人が高齢なので庭仕事も満足に行かなくなった。こうなると日曜とはいえ平日より忙しい。亦御午過ぎに職場に教材を届けた。今年は日曜も少し授業をやっている。
6/2・土
政府は夏の電気不足を材料に、福井の原発の再稼働するようにと散散脅して来た。関西でも反対は大きかったが、滔滔急先鋒の西の青年将校も折れて仕舞い、運転再開を容認したようである。一時の再稼働を万時に延長せぬよう此処はしっかり見張らなくてはならない。
ところで、青年将校は市の職員が刺青を付けていないか、裸にしてまで検分すると云う。是非その勢いを以て原子力村を裸にして欲しいと思うが、一介の職員と原子力推進派の博士や大臣を同列にして闘うと云うのは思想信条的には凡そ出鱈目で節操のない事をしていると思った。単なる目立ちたがり屋で無ければいいと思う。
一日曇り時時薄く晴れた。家人の快気祝いをする為に、今晩は鮨を取り寄せた。併し注文から配達まで一時間半もかかり、空腹の余り両家人とも不愉快となる。結局無言の三人は、健康の神に感謝することも無く、四人前の握り鮨をがつがつ食べて御仕舞となった。
6/1・金
昨夜は1時過ぎに就寝したが、冷たい麦酒と脂が濃いラーメンは与党内以上に相性が良くないらしく、3時には胃がかんかんになって起こされる。以後何度も上厠す。5時には漸く落ち着いた。午後出社。雷雨あり。少し身を入れて仕事をしなくてはならないと思ったが、既に週末である。金曜会出席。胃腸不調の為早めに帰る。