普段は鉄道(しかも在来線)を使う私でも、たまには高速道路で移動することもある(主に高速バスだけど)。SAやPAに寄れば、必ずと言って食うものがあって、それはアメリカンドッグである。
高速道路とは現代における人工物の頂点の一つであろう。新幹線は街に駅をつくる以上、駅の周辺は街の中を通らざるを得ず、したがって通過中でも街の雰囲気は少しはわかる。それに対して高速道路は終始徹底的に郊外を走る。地域の色や空気が入り込む余地は新幹線以上にない。
そして合理的に設計された清潔なサービスエリアでは、自分がどこの地方のなんという市町村にいるのか、サービスエリアの冠名以外に見当がつかない(しかもその地名がよくわからないことが多い)。したがってそこでは、地域色のある「ご当地グルメ」とか「駅弁」(正確には「速弁」というらしいが)は不要である。地域差などありようもないジャンクフードのほうがむしろふさわしい。
サービスエリアで下車する。食べ物を求め、クルマから駆け降りる人々は大抵手ぶらで、たとえ冬であっても薄着である。同一方向に移動はしているのだろうが、乗っているクルマという「器」が違う以上、なんの連帯感も感慨もない…。何重にも脱色され、原子化されたような個人が集う様は、群集の中の孤独を思い知らされる。そのような場所には、アメリカンドッグが最も似合うのである…。(そして私はカラシをたくさんつけ、その孤独と辛さにむせび泣くのである。)