忘年考

 忘年会は日本独自の習慣だと言う。私にもこの時期になるとあれやこれやとお誘いがかかる。年中飲んでいる相手と今さら忘年会もないのだが、ほぼ強制参加なので私としてはどうしようもない。でも、年がら年中飲んでいるあの会合は、何というのだろうか? あいにく、忘月会、忘週会、忘日会という言葉はないようである。それに毎日のように飲んで忘れていたら、記憶喪失になってしまうかもしれない。
 今の仕事を本格的に始めて約10年、私も30代半ばである。日々あれやこれやの出来事に対応して忙しく仕事をしているように感じるが、結局のところは、十年一日とまでは言わないが大同小異な瑣末事に追われていると言っていい。だから別段記憶に残るようなことがあるかと問われると、答えに窮する。なるほど、これはある種の記憶喪失状態と言ってもよさそうだ。
働くということは恐らくそういうことの繰り返しなのだと思う。そしてその繰り返しに耐えられるようになるということが、ひとつの青年期の終焉を示すのであるとも思う。