街がこんなにキレイなわけがない・・・

 こうして街を歩いてみて、本当にきれいだと思う。歩道もいいし、公衆トイレもいい。近所の小学校も建てかわった。でも、本当にそれらは私たちの姿なのであろうか…。
 職場がある商店街にはアーケードがついている。かなり立派なものである。そのアーケード約150メートルの定期補修に約2800万。その三分の二は都と区の補助金である。よく出してくれたものだと思う。アーケードの半分はすでにシャッター通りであり、住民の福祉にはたまの雨宿り程度しか役立っていないというのに…。
 アーケードのわきには戦後に建てられた住宅が並び立つ。どれも築数十年の年代物と言うよりか、安普請の応急住宅である。戦後わたくしたちはこういう住宅に住み働いてきた。
 きれいな公的スペースと貧しい個人の住宅。どちらがこの国の真の姿なのであろうかと問いたくなる。そして恐らく他人の財布によらない分だけ後者であると答えるしかなかろう。
 公共事業もアーケードの補助事業も財政という分配システムがあってのものである。今そのシステムは破綻しつつある。「公園や道路や学校やアーケードを直すお金はもうなくなりました」となる日は確実に近付いている。だが別に悲観することはない。公共財の水準がこの国の本来の姿に引き下がるだけのことである。