4月9日・土曜

 震災からすでに4週間が経過した。いまだに15万人が避難所に身を寄せているという。3日も暮らしたら嫌になるであろう体育館にゴザを敷き、満足に水も出ない共同トイレとプライバシーゼロの環境に4週間とは…。それを思うだけでやはり花見どころではないのである。もっとも我々が花見を中止したからといって避難所が豪華になるわけではないが、これはやはり気持ちの問題である。
 反原発の立場をとる研究者らはより切実なことを言っていて、放射能汚染は政府発表より深刻であると指摘している。彼らの多くは大学内でも出世栄達の路を阻まれ、いまだに助手や助教授であるというから、象牙の塔と言っても俗世間とたいした違いはない。
 特に原子力などと言う巨大な産業相手では、少数派が反対意見を述べたところで、徒手空拳にも等しいのだろう。今回、彼らの警告は当たってしまったがこの場合予言が的中したところで素直に喜ぶわけにもいかない。一方、原発推進派の学者先生方はどうしているのだろうか。あいにく自主的に謹慎したという話も聞かない。
 午後から雨がやみ、花見は決行となる。花見と言っても目黒川沿いに少し歩いて居酒屋に入るだけのことである。さすがに人出は多く中目黒の居酒屋は満員御礼となる。従業員総出で応対しているようだが、ビールが来てもグラスがなく、焼き鳥が30分たっても出てこなかったり隣の注文の品が来たりと対応は混乱を極めた。平時ですら客が集中すると、この状況なのだから、避難所に必要な品物が届くわけがない。節電中なので、目黒川沿いのぼんぼりにも明りが灯ることはなく、夜桜見物とはならなかった。