20年来の非常時

 バブル崩壊以後の国の借金の増え方は、実にたいへんなものがあった。20年前は200兆だったものが、今は600兆。実に3倍である。この間景気対策という側面で公共事業に予算を使い続けてきたわけだが、来年度の予算は軽く90兆を超え、それでも少ない・増やせの声が連立与党内にはあるようである。いわく「非常時だ」と。
確かに、昨年来の経済危機と税収の落ち込みは非常事態には違いないが、それならば、そもそもこの国の20年間は常に非常時あったといえるであろう。非常時のなかでもとりわけ非常時なのだと抗弁されれば仕方がないが、非常事態を連呼したところで、政治家個人のふところが痛むわけではないし、そのツケは結局国民が払うことになる。
 それにしてもこの20年、なんにも打つ手はなかったのだろうか??  規制緩和によって輸出産業に競争力をつける方策は、国民の格差を拡大させ購買力を減退させる結果に終わった。輸出依存と従来型の財政出動に頼る経済政策は何度繰り返したところで、うまくいかないことはもう目に見えている。
 新政権は予算の大規模な組み替えをすると言っていた。コンクリートへの支出を減らし子ども手当や農家の所得補償等によって、家計を直接温める方向への転換である。内需を中心に経済成長とまではいかないが安心感のある経済社会を目指す方向は私も正しいと思う。しかしこのままでは財源がない。今まで手付かずだった特別会計埋蔵金からいくら捻出できるのか? それにそもそもそこにそんなにたくさんのお金があるのだろうか?
単に不慣れな新政権の切り込み方が不足しているだけならよいが、 最近の私は、ひょっとしたら本当にもうお金はないのかもしれないという不安にかられている。期待した税外収入がなければ、思い切った政策転換はできなくなるかもしれない。そして非常時は続き、借金ばかりが膨らみ、いよいよ大増税がひかえているのである。



とまあ、ここまではちょっと悲観的にすぎる予測かなぁ。では、多少自己修正して、現在は非常時中の非常時であるとはいえ、経済社会を根本的に変革する必要性に変わりはない。そのためには、たとえ一時の借金が増えようとも、変革に対しての支出を躊躇すべきではない!! とでも、言っておきます。