昼間は晴れて暑い一日となる。今日から連休なので信州のおばの家に出掛ける事にした。一人で行っても詰まらないので、鳳生大学の後輩の月波君を呼んだ。彼の仕事終了に合わせたので、夜の高速バスで行くことにした。
新宿の高速バス駅はただでさえ手狭な上に、休みとあって大変なお客が押し寄せ、増発便も合わせてほぼ全便満席といった繁盛ぶりである。窓口氏も運転手氏も誘導員氏も声を枯らして対応中で、折からの暑さと相まって駅全体が煮えた切ったような感じである。大荷物を抱えた乗客が右往左往し、方方の行き先を掲げた全国津津浦浦のバスが引っ切り無しに出発する様は、鉄道駅とはまた違った感じの活気があってよい。伊那行きの信南交通バスは、何やら深刻な面持ちで話しをしていた男女の横を、御話し中申し訳ないとばかりに掏り抜けるようにして道に出た。
尤も一旦乗ってしまえば、夜のバス車中は至って静かで、景色も見えないから他にする事もない。月波君に「みんな静かだね」と云うと「一人のお客が多いからね」と応える。「僕らは二人だけどあんまりしゃべらないね」と振ると暫くして「男二人ですから」。其れ切り二人とも黙ってしまう事にした。伊那には11時近く定刻に着いた。