中高一貫校異聞

 わたくし貧乏卿の実に稼ぎの悪い本業である塾の仕事も、3月には受験も終わり、閑散期を迎えています。というわけで、生徒に誘われるままに、あちこちの学校のイベントに出かけています。この時期は、吹奏楽部・ブラスバンド部の定期演奏会がよくあります。
なかでも、中高一貫の私立校ですと、中1から高3まで全部員が一体となって、ひとつの演奏を作り出していきます。スポーツと違って全員参加というのがいいですよね。また、6年という幅のある人間関係というのは、人格を形成する上でも、よい経験となるのではないでしょうか。
先輩が威張りくさっている体育会的ノリは御免ですが、中学・高校という時期を、ある程度密度の濃いそして年齢差のある共同体の中で過ごすと、人として相当成長します。
「イギリスの核心が中産階級なら、中産階級の核心はパブリック・スクールという教育制度」であり、「すでに社会や精神面の複雑な要素が入りこんでしまった大学などとはくらべものになら」ず、「パブリック・スクール時代こそ人生のもっとも幸福な時代だったと言って懐かしがる人は少なくない。あのころは、辛くはあっても、面倒なことはない黄金時代だったと思って惜しむのである。あのころはみんなでいっしょに勉強し、いっしょに遊び、何を考えていたのかはともかくいっしょに考え、学校は世の中の縮図だと教えられ、愛校精神のない者が、愛国心など持てるはずがないと信じていたものだった」(E・М・フォースター「イギリス国民性覚書」『フォースター評論集』から) 
寄宿舎制で男子校でエリートぞろいのイギリスのパブリック・スクールとは相当違いますが、高校受験という分断がない日本の中高一貫校というのも、なかなかよいものではないのかな・・・と思えるひとときでありました。
別に中学受験を勧めるわけではありませんが、ご参考までに、ご報告申し上げます。また、せっかく中高一貫校に入ったのならば、皆さんどうぞ上下の交流も深めてください。同年齢であるクラスの友達と付き合うのもいいですが、それだけでは少しもったいないことだとも思いました。