2016年2月

2/29・月
 うるう年だから二月が二十九まである。選りに選って而も月曜日である。吾人が万が一にも国会議員になったならば、まずは二月の二十九日を「国民の休日」にするよう、「国民の祝日に関する法律」の改正に尽力することをお約束す。其の後もカレンダーを真っ赤っかにする運動に、其の政治生命の全てを捧げ邁進することを此処に御誓い申し上げる。
 朝方は小雨。午前中は衆議院予算委員会。政府が民間会社の人員整理を推し進めていると野党が追及していた。更なる問題は、其処に民間の人材ビジネスが介在していることであり、就中その会社の会長にあの元大臣が就任していることであろう。自分たちの都合のいいように制度と政策を変更する。政治家に少少の献金や裏金を掴ませて便宜を図って貰うどころの話しではない。正しく政商である。頭のいい人はやることが違うと思った。
 午後出社。インフルエンザ多し。退社後は立ち飲みを連戦。寒気が入り、帰る頃には霰が降った。以下備忘録。今月は二人ばかりチェーン塾に取られた。まあまあ出来た生徒だから勿体ない。面倒な受験指導をしなくていいから楽ではあるが、此れでは大手塾の草刈り場である。移籍金が欲しい。碑文谷の花月苑も閉店。大貧学院に奉職以来、十数年に渡り夜食担当の任に当たっていただけに残念。確かに此処一二年は御客が激減していた。


2/28・日
 朝から晴れた。ぼんやりしていると三号室が引っ越しをしている。聞けば本日退出希望とのこと。就職先の千葉まで行くと御家族総出で作業している。余りに急な話しである。書類は二日前に送付したとのことだが、何も聞いていない。急いで不動産屋さんのSさんを呼び出して立ち会って貰った。入るのも急だったが、出るのも急である。まあ学生さんだから概ねこんなものであろう。多少は大目に見ないとね。
 昼は新しく出来た家系ラーメン屋に。とんこつ醤油ラーメンというものも昔は東横線に乗り、わざわざ横浜まで食べに行ったものだが、最近は各駅停車で出店している。店が増えた分、内容は玉石混交といった感じで、今日の店など麺が細くて味も穏やか。ちょっと濃い目の東京ラーメンといったところである。出たり入ったりしている内に、花粉に目と鼻をやられる。


2/27・土
 概ね回復す。気力体力満ちて来たので、自転車の組み立てに当たる。手引書を忠実に辿ったら案外簡単であった。併し細部を見ると溶接などは相当雑な感じ。メードインチャイナの廉価品だから仕方がない。それに幾ら漕いでも何処にも行けない自転車なのだから、こんな物で十分である。
 腹も立たない静かな土曜日だったが気になったこととしては、「離島防衛」の為の日米合同訓練をしたこと。映像を見るとやっていることは敵前上陸訓練である。万が一にも何処かの無人島が乗っ取られたとして、日本政府が取るべき方策は、まず国連決議を採り、次に国際協調部隊で以て交通路を遮断し、臨検攻めにするというのが精精であろう。上陸して来た部隊を銃火で迎え撃つならともかく、揚陸艦から下ろした水陸両用装甲車でわざわざ島を奪還するなど、専守防衛のラインを明らかに逸脱している。


2/26・金
 老家人の運動用に室内自転車というものを購入す。併し此の種の通信販売は、例によって組み立て式である。而も相当バラバラである。説明書を見るだけでうんざりす。それにそもそもこういう物を利用するのは女性か高齢者なのだから、多少割高になっても、全部作り終えてから持って来て欲しいと思った。
久久に朝から晴れた。処方箋薬の残りを飲み尽くしても、咳と喉の症状は変わらず。大体入浴剤の会社が作った薬など元から期待薄である。午後遅めの出社。天屋薬局で液体の咳止めを購入。二千円。早速飲む。何だか効いたような気がする。遅れ切った給料の代わりに食事代として壱萬伍千円受け取る。中学三年の授業も今日で御仕舞。退社後は中華立ち飲みに参るも、紫煙と井満さんの悪態が酷い。直ぐに立ち飲みBへ避難す。深酒は無し。


2/25・木
 民主と維新が合併に向けて動き出す。維新の大半は元民主だから、結局出戻りということである。そもそも第二極も安定していないのに、第三極を作るのだと言って出て行った議員は、結果として第一極を利しただけなのだから猛省すべきである。
 咳が残り、御昼過ぎまで只管静養す。午後千寿に出社。此方も受験生は居なくなり、終了モード。適当に教える。「大江戸」で声を使って注文して食べて帰った。


2/24・水
 各種報道によると、北の指導者は先月の核実験前、アメリカに対して色色と交渉を持ちかけていたのだという。併し当局は例によっての完璧主義で、完全な核放棄を要求し、交渉は深まることが無かったとのことである。いつかアメリカに撃ち滅ぼされるという北の皇帝の被害妄想も酷いが、アメリカの原理原則一点張りも困りものである。交渉そのものが継続できなくなるような条件を出しては外交というものは成立しない。くれぐれも嘗てのハルノートのようなことが無いようにして頂きたいと思った。万が一にも乾坤一擲とばかり新高山を登って来たら一大事である。
 朝から曇り。真冬のように寒い。午前中は安静にす。運悪く大貧学院に求職者が来るというので午後早目に出社。見れば吾人より年長の女性で、自身の療養と家族の介護のために、時間給勤務を希望とのこと。経歴は申し分ないので無責任社長は採用する意向らしい。併し給料も払えないところに採用されたところで、本人は不幸に陥るだけだと思うのだが。
体調優れず小咳続く。本当によく風邪を引く。思えば数日前から酒の味が変だった。退社後も立ち飲みBで一二杯さっと飲んで帰宅。夜は小雨。此の時期の寒さは却って堪える。十一時就寝。


2/23・火
 午前中は何だか漫然とす。家人は再び胃の検査。昼は再開した三丁目の肉屋で重チキンカツ弁当650円。老家人と食べる。一方検査帰りの家人は鋤焼きの材料を買って参る。どうにも肉類の過剰摂取である。昼食情報が共有されていないからだと思った。入浴後小咳。残りの漢方薬服用。


2/22・月
 みっつの二で、にゃんにゃんにゃんと言うことで、猫の日ということである。近所の野良猫が産み落とした三きょうだい猫を飼い始めて五年半。確かに猫がこんなにかわいいとは思わなかった。それにネズミも居ない平和な時代の猫である。一切生産的な活動はしないから、只管内需拡大の任に当たっている。
 午後出社。高校受験の指導も今日で御仕舞。再び立ち中華で妙齢女性二人組と話しが盛り上がる。二人は学校が同じで近所の店で飲み歩いているとのこと。ともに明るい感じである。早速ラインを交換す。今年くらい何かいいことが無いとね。


2/21・日
思ったほど晴れず。三月が近い。誕生月が近づいているのは結構なことだが、花粉と税務申告も接近中である。出たり入ったりしている内に何だか鼻が詰まる。点鼻薬を差し差し、申告書類を少し書いた。相変わらず修繕費と設備投資との間で悩む。
夜は「新・映像の二十世紀」。今晩は六十年代以降の学生反乱がテーマ。ベトナム反戦運動や東欧革命におけるテレビの役割が強調されていた。テレビ電波はボーダーレスで真実を伝えたと。併し二十一世紀になってインターネットが出て来てからはどうだろう。SNSとかで、自分に都合のいい情報しか集めなくなったので、却ってタコツボ化が進行しているとはよく聞く説である。


2/20・土
 社会民主党の党大会に野党代表が勢揃いし野党共闘をアピール。参議院選挙の一人区では候補者調整を進めるという。安保法廃止を目指し、あの頑なだった共産党が積極的に動いている。国民連合政府が出来るかは別として、まずは何とか巨大与党に対抗して貰いたい。いっそ過去のことは全て水に流し、あの「剛腕政治家」の候補者調整能力に期待してもいい。年齢的にも最後の御奉公である。
 朝は薄日が差したが昼前から雨。次第に酷くなるも南風は吹かず。結構寒い。夜半には止んだ。一日無為。


2/19・金
 軽減税率を巡りテレビでも国会でも此れは8%か、あれは10%かと議論が続く。今日も食品入りの福袋は果たしてどうなるのかなどと延延衆議院でやっていた。もう少し他に議論すべきことがあるだろうに。つくづく差額税率は面倒臭い。
午後になると前首相が出て来て、議員定数削減の三党合意を反故にしたと怒っていた。併しAには一方的な言いがかりに聞こえるようで、例によって議論は深まらず。それにしてもこれほどまで議論が成立しないのは、そもそもの頭が悪いとか、性格が不誠実で臆病だといったAの個人的な資質に起因するものではなく、政治的な右と左、あるいは社会的階層の上と下との間で、共有すべき価値や、語るべき言葉といったものを、既に私たちが喪失して仕舞ったからではないのかという恐ろしい結論を得るに至る。そして政治的分裂は今や社会的分断に拡大しつつある。ひょっとするともう取り返しのつかない地点まで来て仕舞ったのかもしれない。いつの間にか。私たちは。
何だかがっくりしながら午後出社。暖かいので気晴らしにチラシを撒いて歩いた。退社後は鶴木さんを激安焼肉店に尋ねてミニ金曜会。更に中華立ち飲みに寄って帰る。


2/18・木
 また与党議員が問題発言を。今度はタレント弁護士上がりの参議院議員。人種差別的な発言は勿論酷いが、いっそ日本をアメリカの五十一番目の州に入れたらどうだろうかなどとは思考実験にすらならず。五十一番目の州になり果てていると嘆くことは十分あるだろうが。
不倫騒動で議員辞職した男性議員も酷いことは酷いが、一方で堂堂たる対応をして、結果として女を上げた形となった妻の方も、政治信条的にはウルトラ右派であるという。首相Aに取り入れられたいが為に、より過激に右傾化しているのかどうかまでは分からないが、つくづく政治の劣化、右傾化が著しい。
 一日晴れ。二週ぶりに千寿へ出校。草臥れた言語機能を休ませるために破魔寿司へ。無言で注文し無言で食べて帰った。


2/17・水
 朝は快晴。午後は寒気が入り曇る。帰って来た家人と交代して出社。退社後は中華立ち飲みに。妙齢女性二人組と話しが弾み、機嫌良く帰宅。偶にはこういうことが無いとね。


2/16・火
 本日から大手銀行の普通預金金利は0.001%に。余りに小さすぎてピンとこないが、つまり十万分の一である。こうなると単位をppmに換えた方がいいかもしれない。すると、えーと、幾らになるんだっけ。ただ此れだけ金利を下げても住宅バブルなど起こりそうにもない。何しろ高齢化と非婚化が物凄い。一人で豪邸に住んでも寂しいだけだから家も建たない。併しこれでまた嘘の投資話に騙される人は増えるだろう。年利数%程度でも夢のような儲かり話に聞こえるから。それにしても物を預けて手数料を取るのだから、銀行業もコインロッカーと同じである。いっそバンクをビルロッカーに改称したらどうだろうか。
 火曜不出社。それに合わせ家人は自分の身内と奥湯河原の高級旅館に。老家人と家に取り残される。従って吾人が老人支援当番である。といっても昼はスーパーの中華丼、夜は弁当チェーンの幕の内を出しただけ。あとは水分摂取量と血圧と薬のチェック程度。ほぼほぼ休肝


2/15・月
 10−12月のGDPも結局マイナスに。既に矢は折れ、万策は尽きた筈なのだが。こうなると成長より利益の再配分と云う事になるのは明らかなのだが。
朝は暖かったが徐徐に冬型に戻る。強烈な寒気が入り少雨。午後出社。退社後は立ち飲みBに。更に碑文谷で竹輪天蕎麦。400円。件の一件以来、少しラーメン恐怖症である。


2/14・日
 再びの宿酔。昨夜は大して飲んでない筈なのに結構酷い。御酒も控えなくてはならない。午前中は雨風酷く、大荒れ。天気も体調も午後には回復す。するとまるで四月の陽気。本日無酒。


2/13・土
 昨夜遅くから『右傾化する日本政治』を拾い読みする。同書によると、日本政治は過去数十年にも渡り全般的に右傾化して来ているので、首相Aを引き連り下ろしても此の傾向は変わらないという。右傾化への対抗策としては、都市中間層の良識ある行動に期待を寄せているが、筆者自身かなり悲観的である。
いやしかし、仮に左派リベラルが奇跡の復権を遂げたとしても、その頃右派は更なる右傾化が進行しているだろうから、社会的な合意形成は勿論、最低限の対話自体が不能になっている可能性が高い。同じ日本国民であってもお話しすら通じないとすると、もはや国を分けるより手がない。吾人も愈愈生まれ育ったくにを捨て、引っ越さなくてならない時が来るかもしれないと思った。それにしても土曜の朝から全く暗澹たる気分である。こうなると、「あしたいろ」を聞くしかない。
 春のようなお天気。次第に南風が強まる。ぼんやりしているとシロが目白を取ってくる。まだ子鳥である。暖かいからつい油断したのだろう。春は残酷な季節でもある。庭の隅に埋めてやった。
其の後、メトロに乗り外出。偶には変わった街で変わった物を食べたいということで月波君と亀有に。駅から少し行ったところの「ホワイト餃子」に参る。此処は千葉の野田に本拠があるという独特な餃子の店である。開店と同時に半分程度の席が埋まる。皮の厚い揚げ餃子と言うか、今風に言うと焼き小籠包と言ったところか。併し餃子というものは例によって大して旨い物では無し。
早早に切り上げ、駅北口の居酒屋に入る。天麩羅からピザまであり、値段も安く佳い店だったが、換気口の造りが悪く、トイレの芳香剤の臭いが充満している。舌より鼻に気を付けて欲しいと思った。それにしても亀有には実に十数年ぶりに来たが、古い商店街から飲み屋街もある庶民的な街である。而も特殊浴場まである。こういうものまで身近にあると、子どもの人格形成に微妙な影響を与えそうである。清潔なタワーマンションに閉じ籠っているより却って健全に育つかな。悪所減感療法である。千代田線で芥田先生の高山樗牛論文を音読しながら早目に帰宅。夜半から春の嵐


2/12・金
 一日暖かい。午後出社。今週は何だかぼんやりしている内にもう金曜である。併し金曜会も無くなって久しい。金曜艦隊旗艦たる仲田大将がX女史に夢中になって以来、その役割を果たしていないからだと思った。中華立ち飲みで紫煙に巻かれたので大急いで帰宅すると、老家人が入浴中。高齢者はもっと早く入って欲しいと思った。


2/11・木
 今日も快晴。風も無い。歴史学的には根拠の乏しい祝日だが、休みがある分には有り難い。而も極めて有難い木曜不出社。有為に過ごしたかったが、本を積んだり崩したりしている内に、一日無為。


2/10・水
 再びの快晴。家人が外出しているので、昼はカレーうどんを拵えて老家人と食べる。といっても、「にんべん」の汁を薄めたものに適当なレトルトのカレーを溶かし、「シマダヤ」の茹で麺を煮ただけだが。例によって音楽も料理も実践は苦手である。
 午後まで衆議院予算委員会を聞く。何時の間にか政権側も同一労働同一賃金などと言い始めているらしい。何とかミクスの失敗を棚に上げ、政策的には野党に抱き付こうしている。幾らなんでも姑息である。恐らく正規労働者の賃金を、非正規並みに引き下げることが主眼であろう。其の後出社。退社後は中華立ち飲みと立ち飲みBに。風が強い。震えて帰る。


2/9・火
 日中は暖かい。昼は隣町の手作り弁当。540円。火曜不出社。十年物の国債は愈愈マイナス金利に。市井の預金も軒並み再びのほぼゼロに。こうなるとイスラム金融である。一方株価はどんどん下がる。経済実態とかけ離れた異様な暴騰で儲けたような投機筋が素寒貧になるのは大いに結構だが、政権の維持を狙って投入された年金の御金がつくづく心配である。
 夜は「ガイアの夜明け」を見る。長時間労働を強いる所謂ブラック企業を取り上げていた。監督署による摘発の模様も映す。企業名は実名だから、ゴールデンタイムの民間放送としては良く番組にまとめ上げたというべきであろう。大貧学院は兎も角、上場しているような大手企業や黒字企業もつくづく酷い会社ばかりである。ところであの参議院議員は今頃どうしているのだろう。夜は冬型に戻る。


2/8・月
 結局宿酔に。運悪く今日は植木屋さんが入ることになっていた。枯れた楓の撤去と、枝垂れ桃の植え替えと、松と檜の剪定を行う。併し活動不能状態なのでお手伝いできず。まあ夏と違って方方の葉が生い茂るという訳でもない。今回は楽をさせて貰うことにす。
午後出社。退社後は立ち飲みBに寄る。流石に小量飲酒。月曜なので御客も少ない。珍しく暇そうなのでBの人事を巡って従業員らと話す。K社長は海外展開をも念頭に入れているらしいが、人員が足らないから色色と大変そうである。代われるものなら代わってやりたいが、飲食業など体が持たないだろうな。家に帰ってもノンアルコールビール
大部空いて仕舞ったが、六号室も決まる。何でもシェアーハウスから越してくるそうである。此方も内需拡大である。大体、赤の他人と住むことなどなかなか難しいと思う。


2/7・日
 マイナス金利を指して、有名な評論家が愈愈御金が腐り始めたのですと表現していて、中中言い得て妙だと思った。御金は肉や魚同様の生鮮品だから、銀行屋さんも頑張って貸出先を探さなくてはないということである。昔から唸るほど金持ち、あるいは金が腐るほどあるという言い方はあったが、いざ本当に腐って減り始めるとなると驚く向きも多いかもしれない。腐らない穀物を栽培し始めて以来、金銀財宝やら、銀行預金など、金属や紙や口座のゼロの数などを散散溜め込んできた人類だったが、愈愈暗転し始めて来たということであろうか。いや、そもそも腐るほど貯め込み過ぎている方が悪いのである。
 台湾南部で中地震が起きる。どういう訳だか一棟だけ建物が倒壊。明らかに手抜き工事である。北朝鮮は大型ロケットを開発。破片が落っこちて来ると、朝から大騒ぎをしている。大体、破片も落ちないほどの精巧な弾道ミサイル打ち上げ能力を持ち始めたことが問題なのであって、落ちて来るかどうかも分からない破片を心配しても丸で意味がない。
それにしても北の皇帝も被害妄想が酷い。併し制裁をしようにももう術がない。いっそ大量の物資を一方的に送り付けるという手はどうだろうか。倉庫を埋め尽くすほどの古米、古古米、ミニマムアクセス米、駅前の放置自転車、廃家電、まだまだ使える粗大ごみ、どのみちワンシーズン程度しか着なかったファーストファッション、返品回収された加工食品の数数、その他一切合財を大小の御舟に満載して送り届ける。そして援助漬けにするのである。
 朝から冬型の快晴。成程これならロケットも打ちやすい天候である。午後臨時出社。高校受験生の自習を手伝う。まあ日曜日に数時間余計に勉強したところで大勢に影響はない。でも、一生懸命勉強したという気にはなるだろう。此れは気分の問題である。
夕方になり帰省先から戻った月波君を呼び出して、何時も開店休業状態の古い天麩羅屋に入る。一種の人助けのつもりで、鯵の刺身から、各種天麩羅、天丼まで食い尽くして七千円も使う。日曜だけあって珍しく後客も来たる。商売繁盛、内需拡大である。
其の後、何時もの立ち飲みのBへ。古い話を大声でしていると、「見たことも無いのによくそんなことを言うね」と隣のお爺さんに絡まれる。併し実際に見聞きしたこと以外を信じないというのなら、大正時代以前のことなど誰にもわからないということになり、歴史学などが存在する余地はない。とんでもない言いがかりである。こういう手合いには、年寄りだからと言って容赦はしないつもりだったが、酔いが回り、旨く言葉が出ず。体調も今一つである。十一時頃には帰宅す。
すると深夜のNHKの音楽番組には安田レイが出演。併し「あしたいろ」はワンコーラスで終了。この歌はもっと長く歌わないと良さが出ない。まだまだ新人扱いである。国民的プロテストソングに昇華するには、まずはある程度売れて貰わないといけない。とにかく頑張って欲しい。


2/6・土
 東芝は巨額の赤字を計上、シャープは台湾資本に買われそうとのこと。重電も軽電も大企業も大変である。
 一日曇り。今月の電気使用量635キロワット。昨年二割増し。終夜運転もやめなくては。体調は概ね回復す。朝はバナナ、昼は煮麺。夜は通常食に戻るも御酒は半合のみ。
静養中は「あしたいろ」を繰り返し聴いた。明日を信じ、明日へ投企しようと歌う点では、政治的革新主義やリベラリズムに通底する。「We Shall Overcome」宜しく、此の歌で国会を包囲出来ないものかと夢想した。権力者を罵るシュプレキコールも必要だか、広く人人の心を打つのはこういう素直に前を向いた歌である。シールズ辺りが歌い始めないかな。音痴な吾人も共に歌いたい。落涙するな、確実に。
ところで、政治的志向により音楽の趣向も違うものなのだろうか。ネット上の自称愛国者たちはどういう歌が好みなのだろう。まさかもう軍歌という訳ではあるまい。そういえば『フード左翼とフード右翼』という本もあったっけ。


2/5・金
 就寝直後から酷い胃痛。矢張り酒と脂は相性が悪い。結局二つの方向から緊急排出され、数時間掛けて消化器系はほぼからっぽとなる。発熱等は無いから感染症の可能性は薄い。急性二日酔いである。数日来の暴飲で胃腸も弱っていたのだろう。昼過ぎには何とか回復す。粥を啜り、出勤しようと思ったら再びの激しい胃痛。結局欠勤。以後発熱。絶食。絶筆。やはりあの鶏肉が悪かったか。


2/4・木
 犬が人を噛むのは当たり前だからニュースにはならない。逆に人が犬を噛んだらニュースになる。有名な元プロ野球選手が覚醒剤所持で逮捕されるというのも当たり前過ぎて、騒ぎ立てる方がどうかしている。
 一日曇り勝ち。立春だか案外寒い。午後千寿に向かう。併し東武線での人身事故の為、例によって半蔵門線は押上止まり。千代田線が混んでいてげんなりす。
千寿校で少し教えたМ君は希望の中学に入れて佳かった。真面目な子で、勉強も嫌いではなさそうだから、私立中学に入れば伸びるタイプであろう。その逆で、親の意向で厭厭塾に入れられ、厭厭勉強して辛うじて滑り込んだような子は、大抵失速して大墜落に至る。中学受験は誠に人を選ぶから注意が必要である。
退社後は腹も減らないので地元まで戻る。こってりラーメン屋に入る。接客係りも作り手もたどたどしい日本語を駆使している。丸で外国に来たのかと思った。


2/3・水
 アメリカ大統領選挙予備選挙が始まる。民主党には民主社会主義者と言う上院議員が出て来て結構善戦している。格差是正を訴え、特に若い人の支持を受けているという。こういう話しを聞くと、アメリカも少し変わって来たなと思う。其の内、社会民主党が出来るかもしれないと思った。
尤も共和党などの右派は例によってどうにもし難い。トランプばかりに目を奪われてきたが、あのクルーズというのもとんでもない候補者である。それにしても、アメリカ社会も分裂が酷い。いっそ、右と左、あるいは上と下に国を分けた方が佳いかもしれない。
 一日晴れ。午後出社。退社後は中華立ち飲みに。何だか食べたりず、碑文谷で更にラーメン替え玉付き。夜はあっさりとした豚骨味が良い。


2/2・火
 朝からよく晴れた。午前中は宿酔気味。昼食はセルフうどんチェーン店に。付け合わせの揚げた鶏肉が矢鱈ピンク色だったので気になったが、ついうっかり全部食べて仕舞った以上、どうにも仕様がない。味や食感は問題無かったから、目より舌を信じることにす。
 家に戻ると安田レイのセカンドアルバム『PRISM』が届いていた。音楽配信サービスというものもあることはあるらしいが使い方がよく分からないから、吾人は未だに実体購入主義である。併し結局パソコンに取り込んで聞くので、CDがぐるぐる回るのは、ほんの一回きりである。案外勿体ないことかもしれないと思った。
早速、「あしたいろ」をフルコーラスで聴く。不覚にも涙止まらず。二番以降の歌詞にはやや冗長な所もあるが、間違いなく名曲である。「明日は 明日は どんな空だろう 晴れでも嵐でも 陽はまた昇る 明日へ 明日へ また手を伸ばす 誰もがせつない祈りの中で 雨上がりの夜明けには どんな涙も渇くから」。いやしかし、こういう歌に触れると、「理想」や「進歩」や「革新」というものにもう一度賭けて見たくなる。


2/1・月
 雪でも降ってきそうな一日。日中も日が差さず、気温は五度程度。万代伯母の様子を見に行った家人によると、伯母は頬はこけたままだが概ね元気そうだったとのこと。いやしかし、毎回こんなことを聞いてばかりいる。担当の介護士によると、年を取ると、限られた栄養を体の要所要所に傾斜配分するため、手や足や頬などは痩せて仕舞うのだという。
そう言えば、動物において最も大切なのは消化器系であって、その他諸諸は進化の過程でくっ付いた付属物なのだと有名な生物学者が言っていたのを思い出した。生き物の原則に逸脱なしである。
午後出社。丁度国語の授業で遊説という熟語が出て来たので、意味を説明しながら、「A首相は遊説中にいよいよお腹を壊しました」という例文を拵えると、透かさず「先生はアンチAですね」と指摘された。頭の鋭い小学生は何処にでも居るものである。
退社後は中華立ち飲みと立ち飲みBへ。丁度「ニュース23」が流れていて、フランスのトッドという高名な学者が意見を述べていた。日本は中間層が保守的過ぎてだらしがないと檄を飛ばしている。もっと社会にコミットしろと云う事である。成程そういう見方もあるのかと感心した。退却戦ばかり考えていては駄目である。併し午後からほぼ立ちっぱなしで何だか草臥れた。