そういえば、あの子は元気かな・・・

 教育格差の話が出ると半ば条件反射のように、東大入学者の親の平均年収は1000万・・・といった話が出てくる。しかしいくらお金をかけたところで誰もが東大に入れるわけでもなかろう。
 私は塾で教えているが、勤め先のような小さな地域塾は、公立中学の中間・期末試験の対策だったり、学校の宿題を一緒に考えたりと、学力の下支えが主な任務である。別にわが塾に通ったからといって、有名校に入れるというものではない。
それでも学力の維持には役立っていると自負している。そして、塾に通える子は、通えない子よりも幸せであるとも思う。
 そういえば、両親の離婚を機に塾をやめていったあの兄弟はどうしただろう。母親は夜の仕事を始め、家賃の安いところへ引っ越したと聞いた。二人とももう高校生になっているころである。
あの、授業料を数ヶ月滞納したまま高校受験直前に来なくなった女の子は? のちに酒臭い父親が「これしか払えない」と言って数万円を置きに来たが、本人がどうなったのか知るすべはない。
あと、友達の付き添いで授業体験に何回か来た、着ているシャツがいつもずず汚れていた小学生の女の子は、突然遠くへ引っ越したと聞いた。幼い弟妹とともに。
そして、授業料を一度も払わないまま塾をやめた、両親が国際結婚の女の子はきちんと高校に通っているだろうか? 何ヶ月かたったのち、「今度離婚します」と言って一万円ずつ払いに来た気弱そうで疲れ切った彼女の父親は元気だろうか…。
職場のある地域の平均所得が特に低いというわけではない。それにそもそも塾である。関心と余裕のない親や子が近づくことはない。したがって公立学校の教員たちはもっとひどいケースに直面していることと思う。
子ども手当」の支給が、彼らの一助になることを切に希望するものである。