シロや

 猫は孤独が好きといわれるが少なくても子猫のうちは、そうではないと思われる。結局、野良が産み落としていった子猫3匹の面倒をみている。名前は、シロ、グレ、ミケ。元は飼う気などなかったから、見たままの暫定的な命名が本名となってしまった。
この時期は庭木の剪定をするのだが、切っても切ってもたいして切れない高枝はさみで苦闘していると、子猫たちは寄って来ては興味深そうに見ている。なかなかに人間好きである。
猫ばかりでなく蚊も寄ってくる。あいにく両手がふさがっていると蚊が襲来しても反撃不能である。お前たち、見てばかりいないで蚊ぐらい退治してくれないかねと愚痴の一つも言いたくなる。恐らく「猫の手も借りたい」という慣用句は、こういう状況から生まれたのであろう。人間が何か仕事をする。すると猫は寄って来ては暇そうにしている。遠くにいるならば、猫の手を借りて来ようとはならない。
「すこしは手伝いなさい」と小言を言ってみる。猫は名前を呼ばれたと勘違いしたらしく「にやぁー」とこたえる。結局三匹はただ正座して観ているばかりである。それとも正座するあたりこちらの気持ちを察して「お役に立てなくてすみません」とでも言いたいのだろうか。