昼は真に夏の日差しが照りつけ、太陽殿はまだまだお前らを楽にはさせないぞうと云う勢いで暑くなる。午後出社。自転車急行運転中に直射日光を浴び、何だか全身がぞくぞくと寒気がして来て気分が悪くなる。基本的には暑いはずだが、暑いのだか寒いのだか却って分からない。昔何かの本で読んだけれど、冬山で遭難死した登山者の何割かは折角着て来た服を態態脱ぎ散らかした状態で発見されると言う。寒さ極まると寒いのだか熱いのだか分からなくなるらしい。要は暑さも寒さも皮膚への痛覚としてはかなり似た所がある様で、また熱中症で死亡した年寄りも、暑い最中に何枚も服を重ね着した状態で発見されると何かで聞いた事がある。
退社後、新しく出来た焼き鳥店に寄る。元元は乾物屋があった所である。この頃は八百屋や豆腐屋といった一般小売店が続続閉鎖された後は、そのまま空き店舗になるか飲食店になる。そして商店街は、次第にシャッター街か飲食街となる訳だが、むろん新規出店がある分、後者となるのは良い方である。
それにしても飲食などと云うのも典型的な内需産業で、詰まる所の御目当ては勤め人の懐である。だが勤め人の懐も決して楽でない。飲み屋諸君、私共の懐をそんなに期待されても困るのだよと言いたいが、色色と店が出来る分には楽しいから良い。しかし幾ら良い店が出来てもやっぱり先立つものがないので、今日は少しだけ飲んで帰った。焼き鳥一本80円の廉価店であったが、財布から何枚かの御札が、先立つ不孝をお許し下さいと言ったかどうかは知らないが店に召されていった。また太陽殿の退場時間は随分と早くなっているので、夜は流石にまあ涼しい。