喪失率7割

 個人商店や商店街の衰退が言われて久しいが、なかでも真っ先に衰退したのは豆腐屋ではなかろうか。統計資料によると、昭和40年ごろには5万軒近くあったものが、現在1万軒余。減少率7割である。別に日本人が豆腐を食べなくなったという話は聞かないから、製造が大規模工場に集約していったということになる。
〈うまい豆腐をつくれば生き残れる〉には違いないが、豆腐という日常的な素材食品にそんな個性や差別化を求めることは酷だろう。一丁数十円という価格競争に持ち込まれた末、一般的な個人事業者は次々と廃業に追い込まれていったというわけである。
 日本の製造業はどうなるのだろうか。一般的な製造業は海外への移転を加速させるに違いない。一部の事業者は差別化を図って国内に踏みとどまるだろう。高い付加価値を持ち、文化的で創造的な製品をつくる企業のみが…。だが、誰もがそのような価値を創造できるとは限らないし、また消費者としても、ブランド製品のみで生活するというわけにもいかない。一般的な製品がみな外国製になってしまったら、どれだけの雇用が失われることになるのだろうか?
 下位の3割が脱落するのならば、それはやむをえないことかもしれない。だが上位3割以外が脱落するのであれば、それはもはや競争とも言えない深刻な事態である。豆腐屋の現状は、日本経済の将来を暗示しているようで、暗澹たる気分にさせられる。